2026.01.14
NEW不動産DXとは?業界の最新動向・必要性・成功事例をわかりやすく解説

著者情報

我妻 貴之(加盟開発課 部長) 詳細プロフィール
不動産業界で18年以上の経験を持ち、賃貸仲介から売買、競売入札、民泊運用まで幅広く対応。不動産経営の最適化を目指し、開業や事業拡大をサポート。
不動産業界では、デジタル技術を活用した業務改革「DX(デジタルトランスフォーメーション)」への関心が高まっています。電子契約の普及やオンライン内見の導入など、業界全体で変化の波が押し寄せています。

この記事では、不動産DXの基本概念から推進状況、具体的なメリット、成功事例までを詳しく解説します。DX推進を検討している不動産会社の方や、これから独立開業を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
不動産DXとは何か
まずは「不動産DX」の基本的な概念と、混同されやすい「不動産テック」との違いを整理しておきましょう。
DXと不動産テックの違い
「DX」と「不動産テック」は似た文脈で使われることが多いですが、厳密には異なる概念です。
| 用語 | 定義 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 不動産テック | 不動産業界向けのIT技術・サービス | 特定業務の効率化・利便性向上 |
| 不動産DX | デジタル技術による事業・組織の変革 | ビジネスモデル・業務プロセス全体の再構築 |
不動産テックは、物件管理システムや電子契約ツールなど、個別の業務を効率化するためのテクノロジーを指します。一方、DXはそれらのツールを活用しながら、ビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を生み出すことを目指す取り組みです。

つまり、不動産テックの導入はDXの「手段」であり、DXは「目的」と捉えるとわかりやすいでしょう。ツールを入れて終わりではなく、業務プロセスや組織文化まで含めた変革がDXの本質です。
不動産DXで変わる!業界のどこまでがデジタル化の対象?
不動産業界におけるDXとは、デジタル技術を活用して、従来のアナログ中心の業務・商習慣を見直し、顧客体験と業務効率の両面を向上させる取り組みを指します。
具体的には、以下のような領域がDXの対象となります。
- 顧客対応:オンライン内見、Web接客、チャットボット
- 契約業務:電子契約、重要事項説明のオンライン化(IT重説)
- 物件管理:クラウド型物件管理システム、IoTセンサーによる遠隔管理
- 営業活動:顧客管理システム(CRM)、マーケティングオートメーション
- 社内業務:ペーパーレス化、RPA(業務自動化)、クラウド会計
DXの範囲は「特定の業務をデジタル化する」だけにとどまりません。顧客との接点から社内オペレーションまで、事業活動全体を対象として捉えることが重要です。
不動産業界でDXは今どうなっている?現場のリアル
不動産業界のDXは他業界と比較して進んでいるとはいえない状況です。その背景と現状を見ていきましょう。
日本の不動産業界でDXが遅れている理由
不動産業界でDXが遅れている主な理由として、以下の点が挙げられます。

- 対面・紙文化の根強さ:重要事項説明の対面原則や、契約書の書面交付義務が長く続いてきた
- 中小事業者が多い業界構造:IT投資にかけられる資金・人材が限られる
- 商習慣の複雑さ:地域ごとの慣習や、取引ごとの個別対応が多く、標準化が難しい
- 高齢の経営者・従業員が多い:デジタルツールへの抵抗感や習熟に時間がかかる
- 成功体験への依存:従来のやり方で成果が出ていた企業ほど、変革の必要性を感じにくい

2022年5月の宅地建物取引業法改正により、重要事項説明書や契約書の電子交付が可能になりました。法的な障壁は徐々に取り除かれつつありますが、現場での浸透にはまだ時間がかかっている状況です。
最新のDX推進データ・調査結果から見る現状
各種調査によると、不動産業界のDX推進状況には以下のような傾向が見られます。
- 電子契約の導入率:大手企業では進んでいるものの、中小企業では導入率が低い傾向
- IT重説の実施率:賃貸仲介を中心に普及が進む一方、売買仲介ではまだ限定的
- 業務システムの導入状況:物件管理や顧客管理システムの導入は進むも、データ連携・活用が課題
全国宅地建物取引業協会連合会の調査などでは、DXへの関心は高まっているものの、「何から始めればよいかわからない」「費用対効果が見えない」といった声も多く聞かれます。

特に中小規模の不動産会社では、日々の業務に追われてDX推進に手が回らない、という課題を抱えているケースが少なくありません。
参考調査データ:GMOグローバルサイン・HDと全宅連が不動産取引における電子契約の実態に関する共同調査を実施
なぜ今、不動産DXが注目されているのか?その理由と背景を解説
なぜ今、不動産業界でDXが求められているのでしょうか。その背景にある課題を整理します。
アナログ業務・商習慣の限界
不動産業界には、長年にわたり続いてきたアナログ中心の業務慣行があります。
- 紙ベースの契約書・重要事項説明書の作成と保管
- FAXによる物件情報のやり取り
- 対面での打ち合わせ・内見が前提の営業スタイル
- 手書きの顧客台帳や物件台帳
これらの業務は、担当者の経験と勘に依存する部分が大きく、属人化しやすいという問題があります。担当者が退職すると顧客情報や進行中の案件の引き継ぎに苦労する、といった事態も珍しくありません。
また、紙の書類管理は保管スペースの確保や検索性の問題も生じます。業務量が増えるほど、アナログ中心の運営では限界が見えてきます。
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人手不足・長時間労働の深刻化
不動産業界は慢性的な人手不足に直面しています。少子高齢化による労働人口の減少に加え、業界特有の長時間労働や休日出勤が採用難の一因となっています。
厚生労働省の調査によると、不動産業の有効求人倍率は他業種と比較しても高い水準で推移しており、人材確保が経営課題となっている企業は多いと考えられます。
限られた人員で業務を回すためには、DXによる業務効率化が不可欠です。定型業務の自動化や、移動時間の削減(オンライン対応)により、少ない人数でも成果を出せる体制を構築することが求められています。
顧客ニーズの多様化・高度化
インターネットやスマートフォンの普及により、顧客の情報収集力は格段に向上しました。物件を探す際にポータルサイトで比較検討し、相場観を持った上で問い合わせてくる顧客が増えています。
また、コロナ禍を経て、非対面でのやり取りやオンライン内見への期待も高まりました。「まずはオンラインで物件を見たい」「契約手続きもできるだけ来店せずに済ませたい」といったニーズは、今後も一定程度残ると見られています。
こうした顧客ニーズの変化に対応するためには、デジタルチャネルの整備が欠かせません。顧客が求めるタイミングと方法で情報提供・対応ができる体制を整えることが、競争力の維持につながります。
不動産DXを推進するメリット
DXを推進することで、不動産会社にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な効果を見ていきましょう。
業務効率化と生産性向上

DXによる最も直接的なメリットは、業務効率化と生産性向上です。
| 従来の業務 | DX後の業務 | 効果 |
|---|---|---|
| 紙の契約書を作成・郵送 | 電子契約で即時締結 | 作業時間・郵送コスト削減 |
| 物件情報を手入力で各サイトに登録 | 一括入稿システムで自動連携 | 入力ミス防止・時間短縮 |
| 顧客情報をExcelで管理 | CRMで一元管理・自動追客 | 対応漏れ防止・効率化 |
| 現地で内見対応 | オンライン内見を併用 | 移動時間削減・対応件数増 |
業務効率化によって生まれた時間を、顧客対応や営業活動に充てることで、売上向上にもつながります。
人手不足の解消と働き方改革

DXは人手不足への対策としても有効です。
- 定型業務の自動化により、少人数でも業務を回せる
- オンライン対応の導入で、移動時間を削減
- クラウドシステムの活用で、リモートワークが可能に
- 業務の見える化により、特定の担当者への負荷集中を防止
働き方の柔軟性が高まることで、採用面でもアピールポイントになります。「テレワーク可」「残業少なめ」といった条件を提示できれば、人材確保の面でも優位に立てる可能性があります。
顧客満足度・成約率の向上

DXは顧客体験の向上にも寄与します。
- オンライン内見で、遠方の顧客にもアプローチ可能
- 電子契約で、来店回数を減らして顧客の負担を軽減
- CRMによる適切なフォローで、検討中の顧客を逃さない
- AIチャットボットで、営業時間外の問い合わせにも対応
顧客の利便性が高まれば、競合他社との差別化につながります。「対応が早い」「手続きがスムーズ」といった印象は、成約率の向上に直結します。
新たなビジネスモデルの創出

DXを進めることで、従来の仲介手数料モデルに加え、新たな収益源を生み出す可能性も広がります。
- 蓄積したデータを活用した不動産コンサルティング
- オンラインサービスを軸にした広域展開
- サブスクリプション型の管理サービス
- 他業種との連携による新サービス開発
DXは単なるコスト削減の手段ではなく、ビジネスの可能性を広げる投資と捉えることが重要です。
不動産DXの主な取り組み・活用例
不動産DXの具体的な取り組みを、分野別に紹介します。
電子契約・契約管理のデジタル化
2022年5月の宅建業法改正により、重要事項説明書や契約書の電子交付が可能になりました。電子契約の導入により、以下のようなメリットが得られます。
- 印紙税が不要(コスト削減)
- 郵送・来店の手間を省ける(時間短縮)
- 契約書の検索・管理が容易(業務効率化)
- 契約締結までのリードタイム短縮(成約率向上)
電子契約サービスは複数の事業者が提供しており、不動産業界に特化したサービスも登場しています。導入にあたっては、顧客側の受け入れ態勢や、社内のオペレーション変更も考慮する必要があります。
オンライン内見・Web接客
コロナ禍をきっかけに普及が進んだオンライン内見は、今や多くの不動産会社で導入されています。
- ビデオ通話を使ったリアルタイム内見
- 360度カメラで撮影したバーチャル内見
- 動画コンテンツによる物件紹介
オンライン内見は、遠方の顧客へのアプローチや、内見前の絞り込みに効果的です。「まずはオンラインで見て、気に入ったら現地へ」という流れは、顧客・不動産会社双方にとって効率的です。
また、Web接客ツールやチャットボットを導入することで、24時間の問い合わせ対応や、初期対応の自動化も可能になります。
顧客管理・物件管理システムの活用
CRM(顧客管理システム)や物件管理システムの導入は、DXの基盤となる取り組みです。
- 顧客情報の一元管理と対応履歴の記録
- 物件情報の一括管理とポータルサイトへの自動連携
- 追客メールやLINEの自動配信
- 進捗管理と業績レポートの自動生成
これらのシステムを活用することで、属人化を防ぎ、組織として安定した成果を出せる体制を構築できます。
AI・データ活用による業務高度化
AI(人工知能)やビッグデータの活用も、不動産DXの重要なテーマです。
- AI査定:過去の取引データをもとに、適正な査定価格を算出
- 需要予測:エリアごとの成約率や価格動向を分析
- 自動追客:顧客の行動データをもとに、最適なタイミングでアプローチ
- 物件レコメンド:顧客の条件に合った物件を自動提案
AIの活用は、経験の浅い営業担当者でも一定の精度で業務を遂行できる環境づくりにつながります。ベテランのノウハウをシステムに落とし込むことで、組織全体の底上げが期待できます。
不動産DX推進における課題
DXにはメリットがある一方で、推進にあたってはさまざまな課題も存在します。
導入コストとROIの問題
DXツールの導入には、初期費用と月額利用料がかかります。中小規模の不動産会社にとって、費用対効果(ROI)が見えにくいことが導入をためらう要因となっています。
- システム導入費用:数十万円〜数百万円
- 月額利用料:数万円〜数十万円
- 教育・研修コスト:導入後の定着にも時間がかかる
導入効果を実感するまでに一定の期間を要するため、短期的な成果を求めると挫折しやすい傾向があります。導入前に目的と期待効果を明確にし、段階的に進めることが重要です。
DX人材・デジタルリテラシー不足
DXを推進するには、デジタルツールを使いこなせる人材が必要です。しかし、不動産業界ではIT人材の確保が難しく、既存社員のデジタルリテラシー向上も課題となっています。
- 経営層がDXの必要性を理解していない
- 現場の担当者がツールを使いこなせない
- システム選定や導入を担える人材がいない
DX推進を成功させるには、経営層のコミットメントと、現場への丁寧な教育・サポートが欠かせません。
既存業務フローとのミスマッチ
新しいシステムを導入しても、既存の業務フローとうまく噛み合わないケースがあります。
- システムに合わせて業務を変えることへの抵抗
- 複数のシステムを導入した結果、かえって煩雑になる
- 紙とデジタルが混在し、二重管理が発生する

DXは「ツールを入れて終わり」ではありません。業務フロー全体を見直し、必要に応じて仕事の進め方そのものを変えていく姿勢が求められます。
不動産DXの成功事例
DXに取り組む不動産会社の事例を紹介します。自社の状況に近い事例を参考に、具体的なイメージをつかんでください。
大手不動産会社のDX推進事例
大手不動産会社では、全社的なDX戦略を掲げ、複数の施策を同時並行で進めているケースが多く見られます。
- 電子契約の全面導入:契約業務のペーパーレス化を推進し、契約締結までの日数を大幅に短縮
- 自社アプリの開発:物件検索から契約手続きまでをアプリ上で完結できる環境を構築
- AIを活用した査定システム:膨大な取引データをもとに、精度の高い査定価格を自動算出
- VR内見の導入:来店前に物件をバーチャル体験できる仕組みを整備

大手企業は資金力と人材を活かし、先進的な取り組みを進めています。ただし、大規模な投資が必要なため、中小企業がそのまま真似することは現実的ではありません。
中小不動産会社におけるDX導入事例
中小規模の不動産会社でも、身の丈に合ったDXで成果を上げている事例があります。
- クラウド型CRMの導入:顧客情報を一元管理し、追客漏れを防止。少人数でも効率的な営業活動を実現
- 電子契約の部分導入:賃貸契約から電子化を開始し、段階的に売買契約へ拡大
- LINE公式アカウントの活用:顧客とのコミュニケーション手段をLINEに移行し、反応率が向上
- オンライン内見の標準化:ビデオ通話ツールを活用し、遠方顧客への対応力を強化
中小企業のDXは、「できるところから始める」姿勢が成功の鍵です。いきなり大規模な投資をするのではなく、効果が見えやすい領域から着手することで、社内の理解も得やすくなります。
不動産テック企業との連携事例
自社でシステム開発を行うのではなく、不動産テック企業が提供するサービスを活用する方法もあります。
- 一括査定サイトとの連携:反響獲得のチャネルを拡大
- 電子契約サービスの導入:専門ベンダーのサービスを利用し、導入ハードルを下げる
- 物件管理システムのクラウド移行:既存のパッケージソフトからクラウドサービスへ切り替え
- AIチャットボットの導入:顧客対応の一次対応を自動化
外部サービスを活用すれば、自社で開発・運用する負担を抑えながらDXを進められます。サービスの選定にあたっては、自社の業務フローとの相性や、サポート体制を確認しておくことが重要です。
DX推進をサポートする仕組み
SUMiTASでは、加盟店向けにDX推進をサポートする仕組みを整えています。直営店で検証・改善を重ねたオペレーションや、効果的なツールの活用方法を、実践的なノウハウとして共有しています。DX推進にお悩みの不動産会社は、フランチャイズ加盟という選択肢もご検討ください。
不動産DXで成果を出すために大切なこと
DXを成功させるために押さえておきたいポイントを整理します。
DX推進の目的とゴールを明確にする
DXを始める前に、「なぜDXを進めるのか」「何を達成したいのか」を明確にしておくことが重要です。
- 業務効率化によるコスト削減が目的なのか
- 顧客満足度向上による成約率アップが目的なのか
- 人手不足への対応が目的なのか
目的が曖昧なまま「とりあえずツールを導入する」と、期待した効果が得られないまま形骸化してしまうリスクがあります。経営課題と紐づけてDXの目的を設定し、達成したい状態を具体的にイメージしておきましょう。
スモールスタートで段階的に導入する
DXは一気に進めるのではなく、小さく始めて段階的に拡大する「スモールスタート」が有効です。
- まずは効果が見えやすい領域から着手する(例:電子契約、LINE活用)
- 成功体験を積み重ねてから、次の施策に進む
- 現場の声を聞きながら、運用を改善していく

いきなり大規模なシステムを導入すると、現場が混乱して定着しないケースも少なくありません。「小さな成功」を積み重ねることで、社内のDXへの理解と協力を得やすくなります。
社内体制・人材育成の重要性
DXは経営層だけ、あるいは現場だけで進められるものではありません。組織全体で取り組む体制づくりが成功の鍵です。
- 経営層がDXの重要性を理解し、リーダーシップを発揮する
- 推進担当者(DX推進責任者)を明確にする
- 現場スタッフへの研修・教育を継続的に実施する
- 成果を可視化し、全社で共有する
人材育成には時間がかかりますが、外部のサポートを活用することで負担を軽減できます。フランチャイズに加盟していれば、本部のノウハウや研修制度を活用できる点もメリットです。
不動産DX推進のまとめと今後の展望
不動産DXは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを変革する取り組みです。
記事のポイントを整理すると、以下の通りです。
- 不動産DXは「ツール導入」だけでなく、事業・組織全体の変革を目指す取り組み
- 日本の不動産業界はDXが遅れているが、法改正や顧客ニーズの変化により推進の必要性が高まっている
- DXのメリットは、業務効率化・人手不足対策・顧客満足度向上・新規ビジネス創出など多岐にわたる
- 電子契約、オンライン内見、CRM活用、AI活用などが主な取り組み領域
- 導入コスト、人材不足、既存業務とのミスマッチが主な課題
- 成功のポイントは、目的の明確化・スモールスタート・社内体制の整備

DXは短期間で成果が出るものではありませんが、取り組まなければ競争力の低下につながりかねません。まずは自社の課題を整理し、できるところから一歩を踏み出してみてください。
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