2026.01.26
NEW不動産業界の離職率は高い?最新データと原因・対策を徹底解説

著者情報

我妻 貴之(加盟開発課 部長) 詳細プロフィール
不動産業界で18年以上の経験を持ち、賃貸仲介から売買、競売入札、民泊運用まで幅広く対応。不動産経営の最適化を目指し、開業や事業拡大をサポート。
「不動産業界は離職率が高い」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。営業ノルマや長時間労働など、厳しい労働環境を連想する方もいるかもしれません。
しかし、実際のデータを見ると、不動産業界の離職率は必ずしも突出して高いわけではありません。一方で、会社によって離職率に大きな差があることも事実です。

この記事では、不動産業界の離職率に関する最新データを紹介しながら、離職率が高くなる原因と具体的な対策について解説します。不動産業界にご興味のある方や、自社の離職率改善に取り組みたい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産業界の離職率の実態
不動産業界の離職率について、まずは公的なデータから実態を把握しておきましょう。
不動産業界の平均離職率データ
厚生労働省が毎年公表している「雇用動向調査」によると、「不動産業、物品賃貸業」の離職率は以下のように推移しています。
| 年度 | 不動産業、物品賃貸業 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 令和2年(2020年) | 14.8% | 14.2% |
| 令和3年(2021年) | 11.4% | 13.9% |
| 令和4年(2022年) | 13.8% | 15.0% |
| 令和5年(2023年) | 16.3% | 15.4% |

このデータを見ると、不動産業界の離職率は全産業平均と同程度か、近年ではやや下回る水準となっています。「不動産業界=離職率が高い」というイメージは、必ずしも現在のデータとは一致していません。
ただし、この統計は「不動産業、物品賃貸業」というカテゴリでまとめられており、レンタル業なども含まれています。不動産仲介会社に限定したデータではないため、業態によって実態は異なる可能性があります。
離職率の推移と最新動向
不動産業界の離職率は、景気動向や労働市場の変化に影響を受けながら推移しています。
近年の傾向として注目すべき点は、業界全体で働き方改革が進んでいることです。かつては長時間労働や休日出勤が当たり前だった不動産業界も、労働環境の改善に取り組む会社が増えています。
また、不動産テックの普及により、業務効率化が進んでいる会社では、従業員の負担軽減につながっています。IT化に積極的な会社と消極的な会社で、働きやすさに差が生じていると考えられます。
一方で、人材の流動性が高まっていることも事実です。不動産業界は経験やスキルが他社でも活かしやすいため、より良い条件を求めて転職する人も少なくありません。
他の業界と比較した不動産業界の離職率
不動産業界の離職率を正しく理解するために、他の業界との比較を見てみましょう。
全産業平均との差
令和5年(2023年)の雇用動向調査によると、主な産業別の離職率は以下の通りです。
| 産業 | 離職率 |
|---|---|
| 全産業平均 | 15.4% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 28.1% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 26.6% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 23.1% |
| 不動産業、物品賃貸業 | 16.3% |
| 教育、学習支援業 | 14.8% |
| 医療、福祉 | 14.6% |
| 金融業、保険業 | 10.5% |
| 卸売業、小売業 | 14.1% |
| 建設業 | 10.1% |
| 製造業 | 9.7% |

このデータからわかるように、不動産業界の離職率は全産業平均と同程度、飲食業やサービス業と比較すると大幅に低い水準です。製造業や金融業ほど低くはありませんが、中程度の位置にあるといえます。
建設業・営業職との比較
不動産業界と関連が深い建設業は、離職率10.1%と不動産業界よりやや低い水準です。建設業は技術職が多く、一度身につけたスキルを長く活かせる傾向があるため、離職率が比較的安定しているとも考えられます。
また、職種別に見ると、営業職全般は離職率が高い傾向にあります。これは不動産業界に限った話ではなく、成果主義の働き方に伴う特性といえます。
不動産営業の場合、成績次第で高収入を得られる反面、成果が出ないと収入が不安定になりやすい側面があります。この給与体系が、一部の営業職の離職につながっている可能性はあります。
不動産業界の離職率が高いと言われる理由
データ上は平均的な水準であっても、不動産業界に「離職率が高い」というイメージがあるのはなぜでしょうか。その背景にある要因を整理します。

長時間労働・激務のイメージ
不動産業界、特に賃貸仲介業には「激務」というイメージが根強くあります。
顧客対応が中心の仕事であるため、お客様の都合に合わせて動く必要があり、夜間や休日に商談が入ることも珍しくありません。繁忙期(1〜3月、9〜11月)には業務量が増え、残業が続くこともあります。
主に賃貸仲介業の場合、入退去のタイミングに合わせて問い合わせや内覧希望が集中するため、特に繁忙期は顧客対応が連続しやすく、短期間で多数の案件を並行して処理する必要があります。また、成約率や迅速な対応が評価に直結するため、スピード感と柔軟な勤務対応が求められる傾向があります。
ただし、近年はこうした働き方を見直す動きが広がっています。定休日の設定、営業時間の短縮、シフト制の導入など、労働環境改善に取り組む会社は増えています。
ノルマや成果主義へのプレッシャー
不動産営業職の多くは、売上目標(ノルマ)が設定されています。目標達成に向けたプレッシャーが精神的な負担となり、離職につながるケースがあります。
成果主義の給与体系では、成績が良ければ高収入を得られますが、成績が振るわないと収入が大きく減少します。この不安定さが合わない人にとっては、長く働き続けることが難しく感じられるかもしれません。
一方で、実力次第で収入を伸ばせる環境にやりがいを感じる人も多くいます。成果主義が向いている人にとっては、モチベーションを維持しやすい業界ともいえます。
休日の取りにくさ・働き方の特徴
不動産業界では、土日祝日が繁忙日となるため、平日休みの会社が多いです。これは顧客の来店や内覧が週末に集中するためです。
「週末に家族や友人と過ごしたい」という人にとっては、この勤務体系がネックになることがあります。ライフスタイルと合わないと感じて離職を選ぶケースも見られます。
ただし、平日休みにはメリットもあります。混雑を避けてレジャー施設を利用できる、病院や役所に行きやすいなど、週末休みにはない利点もあります。働き方の好みは人それぞれなので、自分に合った勤務体系かどうかを見極めることが大切です。
IT化の遅れによる業務負担
不動産業界は他業界と比較して、IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが指摘されることがあります。
紙ベースの書類作成、手作業での物件入力、アナログな顧客管理など、非効率な業務が残っている会社では、従業員の負担が大きくなりがちです。こうした業務負担が蓄積し、離職の一因となる場合があります。
逆に言えば、業務効率化に積極的な会社では、従業員の負担が軽減され、働きやすい環境が整っている傾向にあります。転職先を選ぶ際は、IT化への取り組み状況を確認することをおすすめします。
SUMiTASのフランチャイズなら、煩雑なIT化の課題を解消し、スムーズに業務を進められます。これからの不動産経営を安心・効率的に進めるための最適な選択です。
不動産会社特有の離職率の特徴
不動産業界の中でも、会社によって離職率には大きな差があります。離職率が高くなりやすい会社の特徴を理解しておきましょう。
離職率が高くなりやすい会社の傾向
離職率が高い不動産会社には、いくつかの共通した特徴があります。
| 特徴 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 過度な成果主義 | 固定給が低く、インセンティブ頼みの給与体系 |
| 教育体制の不備 | 新人への研修がなく、放置されがち |
| 長時間労働の常態化 | 残業規制がなく、深夜まで働くことが当たり前 |
| 休日が取りにくい | 有給休暇が取得しにくい、休日出勤が頻繁 |
| 離職の悪循環 | 人が辞める→残った人の負担増→さらに離職 |
こうした会社では、入社しても長続きしない人が多く、常に求人を出し続けることになります。「常に求人を出している会社」は、離職率が高い可能性があるため注意が必要です。
職種別(営業・管理・事務)の違い
不動産業界でも、職種によって離職率には差があります。
営業職は成果主義の傾向が強く、離職率が比較的高い職種です。特に売買仲介や投資用不動産の営業は、成約までに時間がかかることもあり、成果が出るまでに離職してしまうケースがあります。
管理職(プロパティマネジメント)は、既存顧客との関係維持が中心であり、営業職と比較すると離職率は低い傾向にあります。安定志向の人に向いている職種です。
事務職も比較的離職率が低い職種です。ただし、繁忙期に業務が集中する、営業のサポートで残業が増えるなど、会社によって負担の大きさは異なります。
不動産業界で離職率が高くなる主な原因
離職率を下げるためには、なぜ人が辞めるのかを正しく理解する必要があります。不動産業界で離職が発生する主な原因を見ていきましょう。
労働環境・勤務体系の問題
長時間労働や不規則な勤務体系は、離職の大きな原因となります。
- 残業時間が長く、プライベートの時間が確保できない
- 土日出勤が続き、家族や友人との時間が取れない
- 繁忙期と閑散期の業務量の差が激しい
- 休日でも顧客からの連絡に対応しなければならない
こうした労働環境が改善されないまま続くと、心身ともに疲弊し、離職を選択する人が出てきます。
給与体系・評価制度への不満
給与に対する不満は、離職理由として常に上位に挙げられます。
不動産営業の場合、以下のような不満が生じやすいです。
- 固定給が低く、生活が安定しない
- インセンティブの計算方法が不透明
- 成果を出しても正当に評価されない
- 同僚との給与格差が大きすぎる
- 昇給・昇進の基準が曖昧
特に、評価制度が不透明な会社では、従業員のモチベーションが低下しやすく、離職につながる傾向があります。
人材育成・教育体制の不足
新人教育や研修制度が整っていない会社では、早期離職が発生しやすくなります。
入社しても何を学べばよいかわからない、先輩社員からの指導がない、独り立ちするまでのサポートがないといった状況では、新人は成長できずに自信を失ってしまいます。

特に未経験で入社した場合、最初の数か月間のサポートが離職防止の重要なポイントです。教育体制が整っている会社と整っていない会社では、定着率に大きな差が生まれます。
同業他社へ転職しやすい市場構造
不動産業界は、経験やスキルが他社でも活かしやすい業界です。宅地建物取引士の資格や営業経験は、どの不動産会社でも評価されます。
そのため、「今の会社に不満があれば、他の会社に移ればいい」という考え方が浸透しやすく、人材の流動性が高くなっています。
これは従業員側から見ればキャリアの選択肢が広いというメリットですが、会社側から見ると優秀な人材が流出しやすいというリスクになります。
不動産業界における離職率低下のための対策
離職率を下げるためには、具体的な対策を講じる必要があります。効果的な施策について解説します。
労働環境とワークライフバランスの改善

労働環境の改善は、離職率低下に直結する施策です。
- 残業時間の上限を設定し、管理を徹底する
- ノー残業デーや早帰りデーを設ける
- 有給休暇の取得を促進する
- 連休を取得しやすい体制を整える
- フレックスタイム制や時差出勤を導入する
また、営業職でも直行直帰を認める、リモートワークを導入するなど、柔軟な働き方ができる環境を整えることで、従業員の満足度は向上します。
IT化・不動産テックによる業務効率化

業務効率化は、従業員の負担軽減と労働時間削減に効果的です。
| 施策 | 期待される効果 |
|---|---|
| 顧客管理システム(CRM)の導入 | 顧客情報の一元管理、対応漏れ防止 |
| 電子契約の活用 | 書類作成・郵送の手間削減 |
| 物件情報の自動入力 | 手作業の削減、入力ミス防止 |
| オンライン内覧の導入 | 移動時間の削減、対応件数の増加 |
| チャットツールの活用 | 社内コミュニケーションの効率化 |
IT化によって単純作業を減らし、従業員が本来の業務に集中できる環境を作ることが重要です。
給与体系・インセンティブ制度の見直し

給与に対する不満を解消するためには、給与体系の見直しが必要です。
- 固定給とインセンティブのバランスを適正化する
- インセンティブの計算方法を明確にする
- 成果だけでなく、プロセスも評価に含める
- 定期的な昇給制度を設ける
- 資格手当や各種手当を充実させる
従業員が「頑張れば報われる」と実感できる制度設計が、モチベーション維持と離職防止につながります。
研修制度・キャリアパスの整備

教育体制の充実は、特に新人の早期離職防止に効果的です。
- 入社時研修を体系化する
- 先輩社員による同行研修を実施する
- 定期的なロールプレイング研修を行う
- 宅建取得に向けた支援制度を設ける
- キャリアパスを明示し、将来の展望を示す
従業員が成長を実感でき、将来のキャリアが描ける環境を整えることで、長く働き続けたいと思える会社になります。
エンゲージメント向上施策の導入

従業員エンゲージメント(会社への愛着・貢献意欲)を高める施策も重要です。
- 定期的な1on1面談を実施する
- 社員の声を聞く仕組み(アンケートなど)を作る
- 表彰制度を設けて成果を称える
- 社内イベントやコミュニケーションの機会を増やす
- 経営理念や会社のビジョンを共有する
従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような組織文化を作ることが、根本的な離職率低下につながります。
離職率の低い不動産会社を見極めるポイント
不動産業界への転職を考えている方に向けて、離職率の低い会社を見極めるポイントを紹介します。
採用情報・企業姿勢のチェック
求人情報から読み取れる情報を注意深く確認しましょう。
- 給与体系:固定給の金額が明示されているか
- 平均勤続年数:公開されている場合は参考になる
- 研修制度:具体的な内容が記載されているか
- 求人掲載頻度:常に求人が出ていないか
「年収例」として高い金額だけが強調されている場合は、インセンティブ頼みの給与体系である可能性があります。固定給がいくらか、インセンティブの条件は何かを確認することが大切です。
働き方改革や制度面の取り組み
会社の働き方に関する取り組みを確認しましょう。
- 年間休日数:120日以上あるか
- 有給休暇取得率:公開されていれば参考になる
- 残業時間:平均残業時間が明示されているか
- 産休・育休取得実績:ワークライフバランスへの姿勢がわかる
- 福利厚生:充実度は会社の従業員への姿勢を反映する
働き方改革に積極的に取り組んでいる会社は、従業員を大切にする姿勢があると考えられます。
社員の声・口コミの活用
実際に働いている(働いていた)人の声を参考にするのも有効です。
- 転職サイトの口コミ:労働環境や社風についての情報が得られる
- 面接時の質問:入社後の働き方について具体的に質問する
- 職場見学:可能であれば、実際の職場の雰囲気を確認する

口コミ情報は参考程度にとどめ、鵜呑みにしないことも大切です。ネガティブな意見ばかりに偏っている場合もあるため、複数の情報源から総合的に判断しましょう。
面接では、「御社の離職率はどのくらいですか」「定着率を高めるために取り組んでいることはありますか」といった質問をしてみるのも一つの方法です。誠実に回答してくれる会社は、透明性のある組織である可能性が高いです。
まとめ:不動産業界の離職率とその対策ポイント
不動産業界の離職率について、データと背景を整理してきました。
記事のポイントをまとめると、以下の通りです。
- 不動産業界の離職率は全産業平均と同程度の水準にある
- ただし、会社によって離職率には大きな差がある
- 離職率が高くなる原因には、労働環境、給与体系、教育体制の問題がある
- 離職率を下げるためには、働き方改革やIT化、評価制度の見直しが有効
- 転職先を選ぶ際は、求人情報や口コミから働きやすさを見極めることが大切
「不動産業界=離職率が高い」というイメージは、すべての会社に当てはまるわけではありません。労働環境の改善に取り組む会社は増えており、働きやすい環境を整えている不動産会社も数多く存在します。

不動産業界への転職を検討している方は、会社選びの際に離職率に関する情報も参考にしながら、自分に合った会社を見つけてください。また、不動産会社を経営されている方は、離職率低下に向けた取り組みを通じて、従業員が長く働き続けられる環境づくりを進めていきましょう。







