2024.10.23
不動産鑑定士が独立する方法は?開業準備と成功のポイントを解説
著者情報
我妻 貴之(加盟開発課 課長) 詳細プロフィール
不動産業界で18年以上の経験を持ち、賃貸仲介から売買、競売入札、民泊運用まで幅広く対応。不動産経営の最適化を目指し、開業や事業拡大をサポート。
不動産鑑定士として働いていると、資格と経験を活かして独立を考えることもあるのではないでしょうか。しかし「どうやって開業すればいいのか」「鑑定士1本で食べていけるのか」などの不安や疑問も浮かぶと思います。
そこで本記事では、不動産鑑定士が独立する選択肢や準備方法、成功のポイントなどをお伝えします。独立をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要約
- 不動産鑑定士は独占業務ができ、資格の難易度から独立が多い
- 独立時には人脈づくり、集客方法、資金の準備が重要である
- 成功には他社との差別化や兼業による収入源の多様化が有効
独立する不動産鑑定士が多い理由
勤めている会社を退社するにはとても勇気がいりますが、実は不動産鑑定士で独立する人は多くいます。なぜ多いのか、理由を説明します。
不動産鑑定士として独占業務ができるから
不動産鑑定士が独立しやすい大きな理由には、不動産鑑定士の資格取得が難しいことと、独占業務ができることの2つが挙げられます。
国土交通省が発表した「令和5年不動産鑑定士試験の合格者」によると、令和5年(2023年)の試験では、受験者885名に対して合格したのは146名、合格率は約16%でした。
受験者数も合格者も、とても少ないことがわかります。さらに鑑定評価や「不動産鑑定評価書」の作成業務ができるのは、不動産鑑定士の有資格者のみです。
そのため社内に不動産鑑定士がいなければ、相談者や売主から鑑定を依頼されたときには外注をしなくてはなりません。このように不動産業界で重宝されやすく、安定的に仕事の獲得が見込めることが、不動産鑑定士で独立開業する人が多い理由です。
不動産鑑定士1本だけでは難しいことも
不動産業界で重宝される不動産鑑定士ですが、鑑定評価のみで安定した収入を得るのは容易ではありません。
一般の相談者からの依頼数自体はあまり多くはないため、クライアント(依頼元)となり得る企業の人脈がなければ、仕事の獲得に苦戦してしまう可能性があるからです。
そのため不動産鑑定士として独立開業するときには、経営方法や集客などの入念な準備が重要になります。準備については次章で詳しく説明しましょう。
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不動産鑑定士が独立する前にしておきたい3つの準備
不動産鑑定士が独立開業するときにしておきたいのは、主に次のような準備です。
- 人脈づくり
- 集客方法
- 開業資金と一定期間の維持費
それぞれ説明します。
1.人脈づくり
鑑定評価の案件数を安定させるには、広告やセミナーなどの集客活動のみでは難しい場合もあります。そのようなときに頼りになるのが、“人脈“です。
鑑定評価の依頼は一般の相談者のほか、企業や金融機関に勤める鑑定士を通じて入ってくるケースもあります。思わぬ人や企業から仕事が舞い込んでくる可能性もあるため、人脈づくりがとても重要です。
会社勤めをしながら人脈を増やす方法としては、異業種交流会や同業勉強会への参加があります。名刺交換や会話を通して、どのような業務ができるのかをアピールしておくことが大切です。そして独立後は、日本不動産鑑定士協会連合会に入会すれば、同業者との横のつながりもできるでしょう。
2.集客方法
人脈づくりに通ずる部分もありますが、開業前には集客方法を考えておくことも大切です。
メインのクライアントとなるであろう、一般の相談者、不動産会社、土木事務所、税理士、弁護士などからの依頼を請け負うために、どのようなアプローチをすればいいのかを考える必要があります。
集客方法として有効なのは、Webサイトの作成やSNSの運用、Web広告、チラシ、無料相談会、セミナーなどです。自分が狙いたいターゲット層に合わせて、アプローチ方法を考えてみてください。
3.開業資金と一定期間の維持費・運転資金
不動産鑑定士として開業するためには、開業資金と収入と一定期間の維持費・運転資金が必要です。開業資金としてかかるのは、主に次のような費用です。
- 事務所の初期費用
- 事務用品、OA機器
- 法人設立費用(個人事業主としての開業なら不要)
- 不動産鑑定業者の登録申請
- 日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)の入会金
上記の費用のほか、収入が安定するまでにかかるであろう維持費・運転資金も、開業前に用意しておくと安心です。
開業資金や維持費は開業場所や方法などによっても異なるため、事業計画書を作成し、どのくらいの資金が必要なのかを見積もっておくと良いでしょう。
不動産鑑定士が独立後に成功するためのポイント
独占業務ができる不動産鑑定士であっても、独立が必ず上手くいくとは限りません。開業で成功するためには、以下のポイントを意識することが大切です。
- 他社との差別化を図る
- 対応できる業務を増やす
- 顧客ターゲット層を絞る
それぞれ説明します。
他社との差別化を図る
集客において重要なのは、他社との差別化です。
クライアントが依頼先を探すときには複数社で比較検討するものですが、その際に強みとなる部分があると有利になるでしょう。
たとえばジャンルの専門性や他業務の請負、宅建士とのダブルライセンスなど、クライアントに依頼するメリットや安心感を与えることが重要です。
対応できる業務を増やす
対応できる業務を増やすのも、ひとつの方法です。
たとえば宅建士資格を取得して、不動産の鑑定評価から売買までをワンストップで対応すれば、仲介手数料も得られます。
売買は1件あたりの報酬額が高いので、大きな収入源となるでしょう。
また、顧客にとって対応してくれる人が不動産鑑定士の有資格者である点は、安心感にもつながります。
しかし売買まで対応するのなら、鑑定士事務所としてではなく、不動産会社として開業したほうが良いでしょう。
不動産鑑定にも対応できる不動産会社として鑑定評価を行えば、他社との差別化によって集客を期待できるからです。
「売買の営業はしたことがないから不安」という方でも、フランチャイズ加盟店になれば研修やマニュアルなどでサポートを受けて開業が可能です。鑑定士1本での経営に不安を感じている方は、不動産鑑定業と仲介業での兼業を検討すると良いでしょう。
顧客のターゲットを絞る
不動産鑑定士のクライアントは、不動産会社、土木事務所、税理士、弁護士、一般の相談者などになるとお伝えしましたが、その中でターゲットを絞るのが成功のポイントです。
たとえば一般の相談者がターゲットなら、「全分野に対応可能」という会社よりも「相続関係の鑑定評価に特化」のほうが安心感を与えられるでしょう。
まずは自分がメインクライアントにしたいターゲット層を決めてから、集客方法を考えてみてください。
不動産鑑定士が独立で成功するためには、人脈づくりと他社との差別化が重要!
不動産鑑定士は資格取得の難易度が高く、さらに独占業務ができるため、独立する人も多くいます。しかし独占業務ができるからといって、事業が必ず成功するとは限りません。
独立開業を成功させるためには、人脈づくりや集客方法、開業資金の用意などの入念な準備が必要です。また、他社との差別化も大きな課題となります。
売買を目的とする一般の相談者をターゲットにするのなら、不動産会社を営む傍らで鑑定士をするのも選択肢のひとつです。
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