2024.10.09
不動産会社の開業資金はどのくらいかかる?費用の内訳や足りないときの対処法を解説
著者情報
我妻 貴之(加盟開発課 課長) 詳細プロフィール
不動産業界で18年以上の経験を持ち、賃貸仲介から売買、競売入札、民泊運用まで幅広く対応。不動産経営の最適化を目指し、開業や事業拡大をサポート。
売買や仲介のような宅地建物取引業(宅建業)を扱う不動産会社の開業を考えたとき、まず気になるのが“資金面”ではないでしょうか。
不動産会社の開業に必要な資金は、400〜1,000万円ほどが目安といわれています。
しかし何に対してどのくらいの費用がかかり、少しでも費用を抑える方法があるのかも気になるところです。
そこで本記事では、宅建業を営む不動産会社を開業するときの資金内訳と目安、資金が足りないときの対処法などをお伝えします。不動産会社の開業を考えている方や、これから事業計画を立てる方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要約
- 不動産会社の開業資金は400〜1,000万円が相場である。
- 資金不足の場合は融資や補助金、助成金の活用が有効である。
- 削減可能な費用を見直し、必要資金を抑えることが重要である。
不動産会社を開業するときに必要な資金の目安
冒頭でもお伝えしたように、不動産会社の開業資金は400〜1,000万円が目安です。
日本政策金融公庫が発表した「2023年度新規開業実態調査」によると、2023年度に開業した人の開業費用は平均値が1,027万円、中央値が550万円でした。
このデータを見ると、不動産会社の開業資金は一般的な開業資金と比較しても低すぎず高すぎず、平均的な数字だと言えます。
では、不動産会社の開業にはどのような費用が、どのくらい必要なのでしょうか。まずは1人で開業すると仮定した場合の、内訳と費用相場に目を通してみましょう。
内訳 | 費用相場 |
---|---|
法人設立費用 | 10~22万円 |
事務所の初期費用 | 150~300万円 |
宅建業者免許申請料 | 33,000円(事務所が1か所の場合) |
営業保証金 | 1,000万円(弁済業務保証分担金の場合は60万円) |
不動産団体への入会費用 | 100~150万円 |
備品代 | 20~150万円 |
フランチャイズ(FC)加盟金 | 100~300万円 |
何にどのくらいの費用がかかるのかは、開業場所や方法によっても異なりますが、これらの費用を合わせると400〜1,400万円ほどになります。
費用の詳細については、次章で確認しましょう。なお、不動産団体の入会費用とフランチャイズ加盟金は、入会または加盟する場合にのみかかります。
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不動産会社を開業するときに必要な資金の内訳
前節で挙げた費用が具体的にどんなものなのか、ここでは費用の詳細をお伝えします。
法人設立費用
会社を設立するときには、「個人事業主」と「法人」のどちらかを選びます。
高額取引が多い不動産業では、権威性や顧客からの信頼性を考慮して法人を設立するのが一般的ですが、開業届を出すだけで手続きが終わる個人事業主として開業する方法もあります。
ただし個人事業主は年収900万円をボーダーラインに税率が変わるため、これを超えるようであれば、法人を設立したほうが良いでしょう。
法人には代表的な種類に「合同会社」と「株式会社」があり、それぞれ設立登記や印鑑登録などの法定費用が異なります。
おおよその設立費用は以下の通りです。
- 合同会社:10万円~
- 株式会社:22万円~
設立に係る手続きを司法書士に依頼する場合は、報酬として上記の費用に別途10万円前後が必要です。
事務所の初期費用
不動産会社の事務所には、次のような初期費用がかかります。
- テナント契約費用
- 内装(カーペットやブラインドなど)工事費
- 事務用品、OA機器
- 外装(看板など)工事費
- 改装費用(自宅開業の場合)
これらの中で大きな割合を占めるのが、テナントを借りる場合の契約費用です。
テナント用物件の契約費用は3〜6か月ほどで設定されていることが多いので、この費用だけで100万円を超えることもあるでしょう。
自宅開業ならば敷金や礼金などの契約費用は抑えられますが、事務所には出入口と独立スペースの設置が義務付けられているので、改装費用がかかります。
これらの他にも、机やイス、パソコン、プリンターなどの事務用品やOA機器の購入費用なども必要です。なお、OA機器はレンタルやリースサービスを提供する会社もあるので、イニシャルコストを圧縮したい方はそれらを利用するのもひとつの手です。
事務所設置の費用相場をまとめるとおおよそ150〜300万円ですが、事務所の賃料や工事費用によっては300万円を超える可能性もあります。
宅建業者免許申請料
宅建業者として不動産会社を始めるときには、都道府県知事への免許申請料として33,000円が必要です。手続きを司法書士に代行依頼する場合は報酬として10万円前後がかかるため、合計で13万円前後になります。
参考:国土交通省「宅地建物取引の免許について」
営業保証金
営業保証金は、不動産取引で損失が出た際に、相手に対して弁済してもらうためのお金です。
不動産会社を開業するときに法務局または地方法務局、支局、出張所などの供託所に本店で1,000万円、支店ごとに500万円を供託することが義務付けられています。
供託には免許日から3か月以内の期限があり、期限を過ぎると免許を取り消されてしまう恐れがあるため、注意が必要です。
不動産団体への入会にかかる初期費用
不動産団体(宅建協会)に入会すると、物件情報の検索に役立つ「レインズ(REINS)」が使えるほか、会員向け情報の共有や取得、サポートなどが受けられます。
また、弁済業務保証金分担金として本店で60万円、支店ごとに30万年を団体に納めることで、先ほど挙げた営業保証金の供託が免除される点もメリットです。
宅建協会で代表的なのが「全国宅地建物取引業協会連合会(全宅)」と「全日本不動産協会(全日)」ですが、それぞれ入会金が若干異なります。
- 全国宅地建物取引業協会連合会:130~180万円
- 全日本不動産協会:130~160万円
キャンペーンによって費用が割引されていることもあるので、詳しくはウェブサイトで確認してみてください。
参考:全国宅地建物取引業協会連合会「開業資金・費用」
参考:全日本不動産協会「入会金について」
フランチャイズ(FC)加盟金
不動産会社の開業には、大手不動産会社のフランチャイズ加盟店として開業する方法もあります。
フランチャイズ契約を結べば商標やブランド名の利用権のほか、経営ノウハウやシステムの提供、定期的な研修やサポートを受けられる点がメリットです。
ただし契約時には一般的に100〜300万円の加盟金がかかり、さらにロイヤリティとして定額方式は月10〜30万円、定率方式は売上に対して5〜10%ほどかかります。
Point!
SUMiTASでは、経済的なリスクを最小限に抑えながら事業を開始できるようにするためロイヤリティを「月額5万円(税別)」と低価格に設定しています。
不動産会社の開業資金が足りないときの対処法
不動産会社の開業にはさまざまな費用がかかることがわかりましたが、足りないときにはどうやって用意すればいいのでしょうか。最後に、開業資金が足りないときの対処法を3つお伝えします。
融資を受ける
開業資金が足りないときには、金融機関や日本政策金融公庫、商工会議所などから融資を受ける方法があります。「融資」と聞くと不安なイメージがあるかもしれませんが、開業した方の多くが融資を利用して開業資金を調達しています。
ただし融資額は事業計画書をもとに、自己資金額や業界経験、能力などから審査されるため、希望額で融資を受けられるとは限りません。まずは事業計画書を作成し、返済に無理のない融資額を考えてみてください。
補助金や助成金制度を活用する
開業資金が足りないときには、補助金や助成金で負担を減らす方法もあります。不動産会社の開業で活用できる可能性があるのは、次の3つの補助金です。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 教育訓練給付制度
「IT導入補助金」は、ITツールやソフトウェアの導入費用の一部が補助される制度です。業務工程や業務種別に応じて、5〜450万円(補助率は1/2)の補助金が支給されます。
「小規模事業者持続化補助金」は、販路拡大にかかる経費の一部を補助する制度です。Webサイトの制作や広告の制作、事務所の改修費などが対象で、補助額は通常枠で上限50万円(補助率は2/3)となっています。
そして開業にあたって宅建士を取得する方は、「教育訓練給付制度」を利用すれば、資格取得にかかった費用の40%(上限年間20万円)が助成されます。
このようにさまざまな補助金や助成金制度があるので、自分が活用できそうなものを探してみてください。
参考:IT導入補助金2024
参考:全国商工連合会「小規模事業者持続化補助金(一般型)」
参考:厚生労働省「教育訓練給付制度」
削れる費用はカットする
開業資金が足りないときには、削れる費用を考えてみてください。
たとえば事務用品やOA機器は自宅にあるものを使い、事務所内も最低限の改装のみにすれば、初期費用を抑えられます。
初めから全てをそろえようとせず、開業後に少しずつ増やしていくことがポイントです。
不動産会社の開業資金は400〜1,000万円が相場!捻出方法の検討を!
不動産会社の開業資金は、400〜1,000万円が相場です。ただし、それぞれの費用にかかる金額によって、必要資金は変わります。
まずは事業計画書を作成し、どのくらいの開業資金が必要なのかを見積もってみてください。それで明らかに自己資金が足りなければ、融資や補助金、助成金制度の活用を検討すると良いでしょう。
SUMiTASフランチャイズでは開業資金の相談も受け付けておりますので、資金面に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。